初めてのご挨拶

死帳別世界＊Ｌｍａｋｉ


初めてのご挨拶

今年はいっぱい、いっぱい色んな事があったね。
でもそれがなかったらＬに逢えなかったんだね。

悲しいことと、
嬉しいこと。

まるで裏と表。
神様が頑張った分だけ、Ｌとの生活をご褒美でくれたのかな。



「Ｌー、もうすぐ時間だよ。こっち来てよ～」
キッチンからＬの居る部屋に聞こえるように少し大声で呼びかけた。
すると、ピルルルルと携帯の着信。
ぱかっと開くとメール受信のようだった。

“あと少しで終わりますから、時間を延ばしてください”

送信者名は勿論Ｌ。
私は小さなため息を吐きながら、携帯を閉じた。

「Lのばか」

茹で上がったお蕎麦を冷水で揉み洗いをして、少しでもコシが残るようにする。
お父さんがお蕎麦好きで、こうするといいよって教わった。
つけっぱなしのテレビはもうすぐやってくる新年に向かってテンションが上がっていた。

「L、時間だよーっ」
ダメ元でもう一度呼んでみる。
だけど昨日から立て込んでる仕事で朝から部屋に籠もりっぱなし。

今日は特別な日なのに・・・

私は一人ソファに座るとポチポチとテレビ番組を変えた。
そして、カウントダウンが始まった。

「・・・・５，４，３，２，・・・いーち」

一斉におめでとうコールがテレビで流れる。

「あけまして、おめでとうございまーす」

ポツリと小さく呟く。そして、

「Lのばーか」

「馬鹿ではありません」
「っ！？」

ふんわりと後ろから抱きしめられた。
「え、いつの間に」
「『Lのばーか』からです」

Lは私から手を離すと、ぴょんっと勢いよくソファに飛び乗った。
私の方に向くと、

「真希さん、あけましておめでとうを言い忘れました」
「・・・・言わないもん」


初めての2人で迎える新年だったのに。
一番最初の挨拶はちゃんとしたかったのに。
なのに・・・

『Lのばーか』

これがLへの最初の言葉になっちゃったのが・・・悔しくて。
滲む涙をぐぐっと我慢した。

「真希さん、新年の挨拶してください」
「やだ」

途端にがりがりと爪をかむ音が聞こえた。

「せっかく新年は二人っきりで・・・と仕事を片付けたのに・・・つれないですね」
「えっ！！　仕事もうないの」

Lの言葉に思わず反応してしまった。
「はい。駿河が持ってこなければ・・・ですが」
「じゃあじゃあ、居留守すればいいよね」
私の言葉にLが笑った。

「真希さん、ご機嫌は良くなりましたか？」
「うん、うんうんっ♪」
Lの首にしがみつくように抱きついた。

「では改めて。
―――――真希さん、あけましておめでとうございます」
「おめでとう、L」


テレビでは既に迎えた新しい年に賑わっていた。