HOLY NIGHTにくちづけを
「ロボ、24日は当然空いてるよね?」
って聞いたら一瞬「何を言っているんだろう」って顔。
そして、
「クリスマスは毎年ケロ山達と会議だよ」
クリスマスなんて無縁なんだよってブツブツ文句を言い続けてる。
―――って言うか、意味わかんないんですけどっ!?
仮にも私とロボは恋人同士なんだよ。
そして初めてのクリスマスなんだよっ。
それなのに私よりロボットをとるワケッ!?
何、平然とそうゆうこと言うの!?
信じられないって顔で見ていると、ロボはちらりと私を見て、
「25日じゃダメ…かな?」
まるで子犬のような甘える視線で聞いてきた。
「毎年恒例なんだ、今更断れないんだよ…ゴメンっ」
ロボはおでこをゴツンと床にぶつけ、土下座した。
「……いいよ、もう」
いい大人が中学生に土下座する姿があまりにも不憫で、つい許してしまった。
途端ロボの顔がキラキラ輝いて、
「わぁーい、ありがとうニコ~」
って嬉しそうに私に抱きついてきた。
私って…ロボに甘いなぁ。
結局私はクリスマスイブに一人過ごすことになった。
一海ちゃんは先日の合コンで見事ゲットした歯科医とデートだし、
お父さんとお母さんもどっかのクリスマスディナーを予約したから朝から出掛けちゃったし。
「はぁぁっ… 世の中平和だなぁ」
一人っきりの家の中。
昼頃に起きて、それからずっと私はテレビをつけてクリスマス一色の番組をぼーっと見ていた。
手元に置いた携帯を開いて見ても新着メールも何もなし。
「冷たいなぁ、ロボのバカ」
きっとケロ山さん達とロボット眺めて熱く語って居るんだろう。
「それにしても恋人が二の次なのが信じらんないっっ」
近くにあったクッションをこれでもかってくらい叩いた。
途端、『ぐぅ~』ってお腹の音。
「そう言えば、起きてから何にも食べてないなぁ」
時間はすでに6時過ぎ。ちらりと食卓を見れば、私の為にと買ってきてくれたフライドチキン。
だけどそれだけじゃ寂しいと、部屋に戻ってコートとマフラーを取ってきた。
「一人でケーキ、ワンホール食べてやる!!」
勢いよく玄関を出ると、
「うわぁっ!!」
「きゃぁっ」
ドスンと「誰か」に当たった。
「危ないなぁ、ニコ~」
「ロボッ!?」
見上げればロボがにこにこ笑って立っている。
…ホンモノ?
「痛い痛いよ、ニコッ」
無意識にロボの頬を引っ張っていたらしく、手をバタバタと振っている。
「あ、ごめんなさい」
「あれ~、ニコはこれからお出掛け?」
抓られた頬をさすりながら小首をかしげるロボ。
「そっ。どっかの誰かさんが遊んでくれないから自棄食いのケーキを買いに行くところなの」
私を放っておいた罰として意地悪してみたくて、可愛気の無い言い方。
「うっ… そ、それは謝るから~」
ロボを見れば反省してますって顔。
「…ニコ怒ってる?」
「……ちょっとだけね。でもこうして会いに来てくれたからいいよ」
笑ってそう言った途端、手を強く引かれ、ぎゅっと抱きしめられた。
「ゴメンね、寂しかった?」
ロボの声が、凄く優しくて、だけど寂しそうで。
途端鼻の奥がツンと痛くなったと同時にポロポロ涙が溢れだした。
「ロボ…」
別に悲しいワケじゃない。
ただ、
ただ、ロボがちゃんと私のこと考えていてくれたのが嬉しくて。
背中に回した手に力を込めた。
「ニコ」
囁くように呼ばれ、顔を上げた。
するとゆっくりとロボの顔が近付いてきた。
私もゆっくりと目を閉じた。
唇に柔らかい感覚。
ほんの数秒の事。
だけど、それはまるで永遠のよう。
離れたと同時に目を開くとロボと目が合う。
ロボの顔はトマトみたいに真っ赤に染まっていて。
きっと私もおんなじ。
そして、そっと囁く。
「ロボ、メリークリスマス」