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doramaちゃんねる★色声機械メインです
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food06.gif色声機械*2コ→6ボ



大事に・・・

透明な袋に入れられたクッキー。
ピンク色のかわいらしいシールで飾られて。

「誰にあげるの?」
「鮎川くん、貰ってくれるかなー」

調理室から出てきたクラスメイトはこのクッキーをどうするかの話題で盛り上がっていた。
しかもこれで今日の授業は終了。
放課後のこれからが勝負らしい。
「ねぇニコは誰かにあげるの?」
隣を歩いていたむーちゃんが聞いてきた。
「んー・・・別に。帰ってから自分で食べちゃうよ」
「そうだよねー」
なんだか誰かにあげなきゃいけない雰囲気が居心地悪かった。
むーちゃんも同じらしく、安心したように笑った。



カンカンカン
いつものリズムで階段を登る。
貰った合い鍵でドアを開け、
「ロボいるーっ」
仕事で居ないのを分かっているのに、ついいつもの癖で言ってしまう。

「・・・・に、ニコ~」
「へっ?」

居るはずのない声が聞こえて、慌てて靴を脱いで部屋に上がり込む。
部屋にはいると、私のお気に入りのベッドにロボが寝ていた。
「どうしたの、今日休み?」
プルプルと頭を振り、
「風邪引いた。・・・移るといけないから帰ってよ~」
よく見れば青白い顔。
ぜいぜいと呼吸も荒い。
「薬は?病院行った?」
「病院はお金無くて行ってない。でも、薬は飲んだ」
ロボが布団から指したところに薬の箱が転がっていた。
「・・・ご飯も食べてないよね。そんなんじゃ」
「食欲ない・・・・」
そういってロボはもそもそと布団に潜り込んだ。
「もぉ。そんなんじゃ治んないよ。
―――なんか作っておくから食べるんだよ」
布団の中のロボに言い聞かせるようにいい、台所へと向かう。
炊飯ジャーを開けるとご飯が少し。
冷蔵庫から残った野菜と今日の卵を取り出し、野菜を小さく刻んだ。
片手鍋に薄味の出汁をつくり、野菜を煮込む。そこにご飯を入れて更に煮込んだ。
静まりかえった部屋に『クツクツ』と鍋の音が響く。
溶いた卵を落として、蓋をして火を止めた。

ちらっとベッドに目をやると、ロボは潜り込んだまま。
寝ちゃってるのか・・・
だから声も掛けず、帰る準備をする。
鞄からメモを取り出して、ペンでロボ当てに書き置き。


“ロボへ
よく寝れた? おじや作ったから食べてね。
なんかあったら電話してね。すぐ来るから。
ニコより”


ペンを鞄に入れようとして、ガサリとした音で思い出した。
今日作ったクッキーの存在を。
一瞬むーちゃんに言った言葉が脳裏をかすめたけど・・・


“追伸。学校でクッキー作ったから食べてね”


テーブルの上にクッキーとメモを置き、そっと部屋を後にする。
かんかんかんと少し控えめの階段の音。


早く良くなってね。
階段の下でそっと祈った。

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