ニコがごくごく普通にうちに居る。
会社から帰ってきて、
『おかえりー』
って言って貰える嬉しさ。
だからニコがうちに居るのが、俺の中でも当たり前になっていた。
時々友達と遊び行くからとか、家の用事があるからとか。
そう言って来ない日は心に穴が空いたよう・・・
「ただいま~」
って言いながら部屋に入っても静まり返った部屋から何の言葉もない。
「あ、今日は試験だって言ってたな」
ひとり呟きながらスーツから部屋着へ着替える。
脱いだスーツを椅子に掛けてゴロリと寝転んだ。いつもなら、
『ロボっ!?
何度も言ってるじゃない。帰ったらスーツは直ぐにハンガーに掛けてって!!』
目くじら立てて怒る姿が愛しくて、何度も繰り返して。
文句を言いながらも俺の投げたスーツをハンガーに掛けて、
『ロボのお嫁さんになる人は大変よね』
『あれ?ニコじゃないの?』
って言えば、トマトより真っ赤な顔で黙っちゃって。
「可愛いなぁ~ニコは」
思い出し笑いをしながら夕飯を作るために冷蔵庫を開けた。
週末前って訳で中にはあまり食べ物がない。
「ろくな食べ物ない・・・仕方がない、卵かけご飯にするか~」
うなだれたままドアポケットの卵入れに手を伸ばしたが、卵を見た瞬間止まった。
真っ白な2つ並んだ卵。
その卵にペラリと付箋が貼り付いていた。
そして、ちっちゃな文字で、
“ロボ、卵食べちゃダメ。土曜日にオムライス作るからね”
「…カップラーメンにしよう」
伸ばした手を引っ込めて、冷蔵庫を閉めた。
明日は土曜日。ニコが来る。
そうだ。
オムライス食べたら買い物に行こう。
この冷蔵庫に入れる俺とニコの二人分の食料を。