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死帳別世界*Lmaki L誕生日記念フリー作品


誰よりも最初

c83.jpg






PHOTOby*sweety*
http://honey.tiyogami.com/



10月も終わりになる頃。
駿河が持ってきた事件は警視庁との合同捜査だった。
いつもならばホテルを借りて、そこを捜査本部とするのだが今回は違った。

いや、今回から違った。



*****


「では真希さん、1時間毎に紅茶とシュガーポットをお願いします」
「うん、わかったよ」
そう言ってLはペタペタと裸足のままエレベーターへと乗り込んだ。
私は扉を閉まったのを見て、エレベーターが止まるのを確認すると部屋へ戻った。
これから始まる戦いの準備をするために。

キッチンの隣にはL専用の部屋。
そこに作られた何段もの棚にはあらゆる種類の紅茶。
それから角砂糖の買い置きがたくさん。
そして保存のきくお菓子。

「3日もてばいいほうだよね」

早速紅茶を入れるティーポットを用意した。
ガラスの可愛いケースには角砂糖。
そのとなりに白いティーカップを並べた。



初めて合同捜査本部が此所へ作られた事件は、あの夏の3ヶ月後だった。
どんな内容の事件かは知らないけれど、テレビで見た風景そのものがそのまんま引っ越してきて驚いた。
私はどうしたらいいのか解らなかった。
だってLの手伝いは勿論、警察の手伝いだって出来るわけないことだから。
広いフロアに捜査本部が出来るのをただ見ていると、Lが言った。

「真希さんにしか出来ない仕事があるんですが、頼んでも宜しいでしょうか?」

その言葉に私がどれだけ救われたかLは解らないかもしれない。
少しでもLの役にたてる。しかも私にしかできない・・・なんて嬉しい言葉だろう。

「うん、もちろんだよ」
私がLに頼まれた仕事は一定の時間で紅茶とシュガーポット、そしてそれなりの量のお菓子を持ってくること。
そして更に時々ケーキとかのスウィーツも。
以前はワタリさんって人がやってくれていたとLは悲しそうな顔で教えてくれた。




事件は思ったよりも手間が掛かるものだったらしい。
駿河さんが時々Lの意地悪に凹んだりしている姿を見掛ける。
Lのための角砂糖も在庫がそろそろ底をつきそうになって、新しく注文しなきゃな~なんて捜査本部の隅っこのソファで考えていたとき。


「そう言えば、竜崎の誕生日って明日だったよね」


やけに明るい男の人の声が耳に入った。
「―――――それより頼んだ書類は出来たんですか、松田さん」
さらりと受け流すL。
だけどそれは私にしてみたら受け流せる内容じゃなかった。

『Lの誕生日って明日』

なんどもなんどもリフレインする言葉。
初めて知ったそのことになんだかショックだった。





「L・・・」
日々交代で帰宅する為、昼間よりも静かな捜査本部。
Lのキーボードを叩く音がやけに響いていた。
私の呼びかけに気がついたLが椅子を回転させ、振り向いた。

「まだおかわりには早いですよ」
半分以上残ったシュガーポットを手にした。
「違うよ」
「どうしましたか、真希さん」
私の雰囲気にLが手を伸ばした。私はその手にそっと触れると、
「誕生日・・・明日なんだね」
「・・・はい。正確にはあと2分後です」
モニターのデジタルは1秒、また1秒と進んでいる。

「ずるいよ、なんで教えてくれなかったの?」

声が少しだけふるえていた。
「誕生日というものは気にしたことがなかったので」
「でもっ・・・それでも教えて欲しかったの。Lの誕生日にお祝いしたかったよ」
なんだか悔しくて、泣くもんかって堪えるほど涙声になった。
「すみません。では言葉だけでいいです。真希さんに言っていただれるなら嬉しいです」
Lが口角を上げて、微笑んだ。
「・・・ほんとう? それだけでもLは喜んでくれるの?」
「勿論です、真希さんの言葉と笑顔は私を何よりも幸せにしてくれます」
Lの言葉に体中が熱くなった。
私は触れていたLの少し体温の低い手を握りしめ、顔を耳元へ寄せた。


「L、おめでとう。来年も再来年もずっと一緒にお祝いしようね」


ちゅっと耳にキスを落とす。
離れて顔を覗くと、初めて見るLの顔があった。


「おやすみ。また時間になったらシュガーポット持ってくるから」
呆然と止まったままのLを残し、私は捜査本部を後にした。





*****


「りゅっ・・・竜崎っ!! 今の何だよっ」
肩を掴まれ、前後左右とガクガクと揺らされた。
松田の大声が静かな捜査本部に響く。

・・・忘れていました。こいつが居たことを。

「私の可愛い恋人ですが」
「こっ、こっ、こっ、こっ」
「鶏の真似ですか、似てませんよ」
掴まれた肩から手を退かすとクルリと椅子を回転させ、モニターへ向かった。




Fin
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