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scene02.gifセ/ク/ロ/ボ*ロボ+α



初  恋



PHOTOby*RainDrop http://momo.raindrop.jp/



初恋を覚えていますか?











「ロボの初恋っていつ?」

ベッドに寝ころんで、視線は漫画のままニコが尋ねてきた。
あまりにも脈絡のない、唐突な質問に最初意味すら理解できなかった。

「だ・か・ら、初恋っていつって聞いたの」
まったく返事をしない俺にもう一度聞いてくる。



…初恋。




ふと『あの子』の顔が脳裏に浮かんだ。


「いっちゃん」


あの子…みなちゃんはいつも俺をそう呼んでいた。
うちの近所のアパートに住んでいて、母親同士が仲良かった為か、毎日当たり前のように一緒に遊んだ。
みなちゃんは五歳上で、くるくる表情のかわる明るい子で、誰からでも好かれるような女の子。
もちろん俺も本当の姉のように慕っていた。


だけど。
みなちゃんは春に転校していった。
所謂『親の都合』ってので。




「いっちゃん、泣かないで」
お別れの朝。
俺は男だというのにわんわんと泣いた。
涙だか、鼻水だかそれすら解らないくらい顔中ベショベショにして。
そんな姿を見た、みなちゃんは最後まで泣かなかった。…いや、泣けなかったのかもしれない。

「み゛っ…み゛な゛ぢゃんっ」
行って欲しくない一心でみなちゃんの袖を握っていた。
みなちゃんはそれでもイヤな顔をせずに俺の頭を何度も撫でた。
「いっちゃん、いつか会えるから。きっと」
何度も何度も、優しく言い聞かせるように言う。
「男の子はそんなに泣いちゃダメよ」
って笑って見せた。

だから俺は頑張って、頑張って笑って、
「じゃあ、ぜったい、ぜったいだよ」
って小指を差し出した。
みなちゃんが小指を絡め、


「やくそくげんまん、うそついたらはりせんぼんのーますっ」











「…で、それでどうなったの?『みなちゃん』とは」
ベッドから下りてきたニコが、俺の横に座った。
「何年か前に俺の実家に来たんだ」
「へ~、ロボに会いに?」
ニコの言葉に否定もせず、固定もせず。ただ。
「会えなかったんだよ。俺はすでに上京してきていたから。それに…」



「今度結婚して、外国へ行くからって。…永住するんだって最後の挨拶に来たんだ」


って言った瞬間ニコの顔が曇った。今にも泣き出しそうな…そんな顔。
そう。
それはまるで…


その話を聞いた瞬間の俺の顔。


転校していったあの日のように、また遠くへ行ってしまった。
電話越しで、母ちゃんが『みなちゃん綺麗になった』とか『威一郎に会えなくて残念と言ってた』とか話していた。
だけど…ほとんど耳に入っていなかった。



「それがロボの初恋なの?」
ニコの言葉にぷるぷると首を振った。
「わかんない。そうだったのかもしれないし、違ったかもしれない」
「…そっか」
そっとニコが手を重ねてきた。
俺より少しだけ高い体温のニコの手はほんわかと温かくて。
「きっと、きっとまた会えるよ。…ね」
ニコの優しい言葉に頷いた。





青く澄み渡る広い空。
彼女の住む町へと繋がっている空。


いつか会うことが出来たら。
みなちゃんに伝えたい。





もう、俺泣かないよ。
守りたいものがあるから、泣いていられないんだ。






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