＊忘れっぽい彼女と…＊

踊/る/大/捜/査/線＊青島×すみれ


＊忘れっぽい彼女と…＊

「すみれさんっ」

さっさと帰るつもりで刑事課を出た途端、呼び止められた。
振り返ると青島君が取調室から手招きしている。しかも嘘臭い笑顔で…


こうゆう時に限って変な事頼まれるのよね。
 

なんて思いつつ、取調室へ入った。
中には青島君ひとり。
「なんの用なの？」
「まぁまぁ、とりあえず座ってよ。すみれさん」
青島君に勧められるままにイスに座る。
「早く帰りたいんだけど…」
「実はさ、今夜当直なんだよね」
「あら、ご愁傷様。私は非番よ。
ってまさか代われとか言い出すつもり？」
あからさまに嫌って顔で青島君を見た。
「違うよ。すみれさん明日休みだから…はい、ドーゾ」
青島君は私の手を掴み、掌に何かを置いた。
「なにこれ？」
小さな小さな、綺麗にラッピングされたもの。
「…すみれさん。最近カレンダーとか見た？」
呆れたような顔で青島君は笑った。
青島君に言われて、取調室のカレンダーに目をやると、

「あ、white day…」

途端、手のひらに乗っている物の意味が理解できた。
「すみれさん、顔赤いよ」
「そっ、そんな事ないわよっ」
空いた片手で頬を隠すようにした。
「すみれさんっ」
突然真面目な顔で青島君が私の手を掴んだ。
「えっ…」
「…すみれさん、ゴメンね。こんなwhitedayにしちゃって」
腰を傾げ眉を寄せて、悲しげな顔で覗き込んだ。
「もしかして…気にしてたの？」
「そりゃそうだよっ！付き合って初めてのwhite･dayなんだよっ？」
「…青島君」
「ん？なに？」
「…ありがとう」

嬉しい。

すごく、

すごく大切にされて。


「すみれさん…」
青島君が優しく笑って、少しずつ顔を寄せてきて。
私はそっと瞳を閉じて…


「先輩ーっっ!!
報告書早く出してくださいよぉ～」



「「………」」

あと数センチの距離で止まったまま、
「…真下のやつ」
って呟いて。
その顔がまるでオアズケをされた犬みたいで。
「ぷっ…もう、青島君、変な顔」
思わず吹き出してしまった。
そんな私に何か言いたげな彼に、
「ほら、青島君。真下君が呼んでるわよ」
ドアの向こうで真下君が何度も何度も呼んでいる。
「…じゃあこれで」
そう言って青島君は『ちゅっ』と頬にキスをして、
「明日の埋め合わせは必ずするからっ」
って慌ただしく取調室から出て行った。
青島君にキスされた頬にそっと触れた。
すると突然ドアがひらいて。

「言い忘れてたけど、高いのは…勘弁してね」 

ってわざわざ言いに戻ってきた。 
それが可笑しくって、わざと困らせたくって。

「どうかしらね～」
って笑ってみせた。
青島君は『まいったなぁ』なんて言いながら真下君のとこへ行ってしまった。

私は貰った『お返し』をバッグに入れ、帰る事にした。 
今夜は一段と冷える夜。
だけど。

心が暖かくて。




*******
書いちゃったvv