ロボに手を引かれ、ロボの車に乗り込んで。
そして行き先不明のまま、ロボの車は発進した。
とっくに日は沈み、微かに山沿いが赤く染まってて。
だいぶ走った頃、ロボの車は広い駐車場にはいった。
「さぁ、ニコ降りて」
助手席のドアを開けられ、言われるまま降りた。
そしてやっぱり手を引かれて歩き始めた。
繋いだロボの手が少しひんやりしてて気持ちいい。
なんて思ってたら、突然ロボが止まった。
「ちょっと待ってて」
そう言ってロボは鞄を開け、中から何かを取り出し、そのまま受付へ行ってしまった。
「なんだろ、ここ?」
駐車場から暫く歩いてきたけど、建物が何一つ無くて。
かと言って受付小屋の先に何も無いし…。
しいて言えば…森?林?
「ニーコっ!お待たせ~。さ、行こう」
ロボに手を引かれ受付小屋を過ぎ、森の小道を進んだ。
「ロボ、この先に何があるの?」
「ん~…、そろそろ見えて…あ!ニコ、ほら見てよっ」
ロボの指した先、そこには微かな光の中廻る、観覧車が立っていた。
「すっ…スゴいよっ!!ねぇ、ロボっ!」
繋いだ手をブンブン振りながら、興奮してしまった。
ロボは「でしょ~♪」なんて得意気に笑ってた。
観覧車は遊園地で見るようなのに比べれば、すごく小さいもので。
こんな森の奥、しかも観覧車しかなくて。
なんだか…不思議。
「お客様、お時間ですか乗ってください!」
観覧車脇の小屋から出てきたお兄さんが、私達を急かすように呼び掛けてきた。
「すみません~」
ロボが謝りながら私を誘導するように観覧車の元へ走った。
そして係員に言われるままにゆっくり稼働している観覧車に乗り込んだ。
キョロキョロと周りを見れば、なんとなく人の気配。
だけど全くって言って言い程明かりは無くて…上がれば上がるだけ不安になる。
「ロボ…」
隣のロボの手を強く握った。それがあまりにも突然で、あまりにも力が籠もってて。ロボが『どうしたの?』って顔をした。
途端。
ガタンと大きく揺れ、上空部で観覧車は止まってしまった。
「えっ!?と、止まっちゃったよ?!」
「そうだね~」
って笑って言うじゃないか。笑ってる場合じゃないのにっ。
ニコニコ笑うロボに苛ついてきたとき。
『間も無く時間となります。上をご覧ください』
足元の小さなスピーカーから声が流れた。
「ほら、ニコ。見てて」
ロボに言われるまま見上げる。
観覧車の屋根は透明になっていて星空が見えた。周りに明るいものがないから。山奥で空気が澄んでいるから。
とにかく私が普段見ている星空とは全然違った。キラキラ光るたくさんの星。
なんだか吸い込まれるような。
「ロボ…すごいね」
「宇宙ってこんなのかな…」
ロボも圧倒的な星の数に魅入ったまま。
でも…
「もうすぐ時間ってなんのことか、知ってるの?」
ロボを見れば、教えてあげないよって顔。
…意地悪。
その時。
ヒュッと何か動いた気配。
ん?
「ニコ!始まったよ」
ロボが言ったと同時に、 たくさんの星が降り注いだ。
最初は数えられるだけ。
そしてそれは段々と数を増して。
さっきまでキラキラ瞬いていた星がすべて落ちくるよう。
私も、ロボも言葉が出ない。
ぎゅっと握った手に力がこもる。
「ニコ…やっぱ、宇宙はすごいね」
見上げたままのロボがポツリと呟くように、それから私をみた。
「宇宙って…すごいね」
ロボをみると、嬉しそうに笑っていた。
「ロボ、今日はありがとう」
「ニコが喜んでくれてよかった」
くしゃくしゃっと頭をなでられた。
「また…また私を連れてきてくれる?」
って聞くと、ロボは驚いたような顔をした。
「当たり前じゃん、ニコは特別だもん」
ロボがそう言ってくれるのが嬉しくて、
ロボの特別になれたことも嬉しくて。
だから、今夜だけ。
たくさんの星たちに見守られて、少しだけ勇気を出して。
「ロボ…、すごく、嬉しい」
ロボに抱きつき、一瞬だけ。
触れるか触れないかのキスをした。
For 椎さま
キリリクありがとうございました。